東京都大田区に位置する臨海斎場は、港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区の5区が共同で運営する公営斎場です。この5区にお住まいの方にとっては、他の民間斎場と比較して非常に安価に、かつ火葬場と式場が一体となった利便性の高い施設を利用できるため、葬儀費用の総額を抑える上で最も有力な選択肢の一つとなります。
しかし、公営斎場特有の「組織区内住民」と「組織区外」での料金格差や、式場使用料以外にかかる細かな付帯費用、そして葬儀社に支払う費用との区別など、一般の方には分かりにくい部分も多々あります。「結局、総額でいくら用意すればよいのか？」という不安を抱えるご遺族も少なくありません。
本コラムでは、長年多くの葬儀をサポートしてきたプロの視点から、臨海斎場の複雑な料金体系を徹底的に分解し、火葬料から式場使用料、そして変動費までを含めた総額目安を解説します。また、地域に根差した東京葬儀だからこそ可能な、質の高いサポートと費用対効果のバランスについても触れていきます。
臨海斎場の利用資格と料金区分：組織区内と区外の決定的な違い
臨海斎場の料金体系を理解する上で、最も重要かつ最初に確認すべき事項が「組織区内」と「組織区外」の区分です。この区分によって、火葬料や式場使用料が倍以上異なるケースがあるため、ご自身がどちらに該当するかを正確に把握する必要があります。
組織区内住民の定義とは
臨海斎場を運営する「臨海部広域斎場組合」を構成する以下の5区に、亡くなられた方が住民票を置いていた場合、「組織区内」の料金が適用されます。
- 港区
- 品川区
- 目黒区
- 大田区
- 世田谷区
ここで注意が必要なのは、「喪主（申請者）」の住所ではなく、「故人」の住民登録地が基準になるという点です。例えば、喪主様が地方にお住まいであっても、故人様が上記5区のいずれかに住民票をお持ちであれば、安価な組織区内料金で利用が可能です。逆に、喪主様が大田区在住であっても、故人様がそれ以外の地域（例：川崎市や中野区など）に住民票があった場合は「組織区外」扱いとなり、料金設定が高くなります。
なぜ公営斎場は費用が抑えられるのか
臨海斎場のような公営斎場は、住民サービスの一環として運営されており、税金によって維持管理されています。そのため、営利を主目的とする民間斎場とは異なり、原価に近い、あるいは補助が適用された非常にリーズナブルな設定で施設を提供しています。特に、火葬場と葬儀式場が同じ敷地内にある「総合斎場」であるため、霊柩車やマイクロバスでの移動費（車両費）を大幅に削減できる点も、総額を抑える大きな要因となります。
次章では、具体的な金額を用いて、火葬料と式場使用料の詳細な内訳を見ていきましょう。
火葬料・式場使用料の完全ガイド｜料金表で見るコスト比較
葬儀費用の見積もりを見る際、施設に支払う実費として大きなウェイトを占めるのが「火葬料」と「式場使用料」です。臨海斎場は施設が新しく広大であるにもかかわらず、組織区内住民にとっては破格とも言える設定になっています。
火葬料金の比較
火葬料は非課税であり、以下の通り設定されています。
| 区分 | 組織区内 | 組織区外 |
|---|---|---|
| 12歳以上 | 40,000円 | 80,000円 |
| 12歳未満 | 24,000円 | 48,000円 |
| 死産児 | 20,000円 | 40,000円 |
東京都内の民間火葬場（東京博善など）を利用する場合、最上等の火葬料で約90,000円〜が必要となることが一般的です。それに比べると、組織区内料金の40,000円は半額以下であり、組織区外料金であっても民間より安価に設定されていることが分かります。
式場使用料の比較
通夜・告別式を行うための式場（ホール）の使用料です。臨海斎場には4つの式場があり、それぞれ規模は同じです。
| 項目 | 組織区内 | 組織区外 |
|---|---|---|
| 式場使用料（通夜・告別式） | 100,000円 | 200,000円 |
民間の貸し式場の場合、同程度の広さや設備を借りると20万円〜30万円程度かかることが一般的です。組織区内の方であれば10万円で利用できるため、ここで10万円〜20万円近くのコストカットが可能になります。また、祭壇を飾るスペースや遺族控室も充実しており、価格以上の設備クオリティがある点が臨海斎場の大きな魅力です。
葬儀社選びの重要性
ここで注意したいのは、これらの費用はあくまで「場所代」と「火葬代」であるということです。祭壇の設営、棺、ドライアイス、運営スタッフ、案内看板などは含まれていません。これらは東京葬儀のような葬儀社が提供するサービスであり、別途費用が発生します。施設費が安いからこそ、葬儀社選びでサービスの質にこだわり、総合的な満足度を高めることが重要です。
東京葬儀は、臨海斎場のメリットを活かし、ご予算を抑えつつも心のこもった葬儀を提供いたします。
見落としがちな付帯費用：待合室・保管料などの実費内訳
火葬料と式場使用料以外にも、臨海斎場を利用する際にはいくつかの細かい「付帯費用」が発生します。これらは見積もりの初期段階では概算として計上されることが多いですが、実際の利用状況によって変動するため、事前に単価を知っておくことが予算オーバーを防ぐ鍵となります。
火葬待合室の使用料
火葬中（約1時間〜1時間半）、ご遺族や親族が待機し、精進落とし（食事）を行うための部屋です。臨海斎場では、火葬炉を使用する際に必ず待合室を利用する必要があります。
- 組織区内：20,000円
- 組織区外：60,000円
この待合室料金も、区内と区外で3倍の差があります。組織区内の方であれば、火葬料40,000円＋待合室20,000円＝計60,000円が、火葬に関連する最低限の必須費用となります。
遺体保管料（霊安室）
住宅事情によりご自宅にご遺体を安置できない場合、または火葬までの日数が空く場合に利用します。臨海斎場は人気の高い斎場であるため、時期によっては予約から葬儀まで数日〜1週間程度待つことも珍しくありません。その間の安置費用も考慮する必要があります。
- 組織区内：3,000円 / 1日
- 組織区外：8,000円 / 1日
民間の霊安室を利用すると1日あたり10,000円〜20,000円かかることもありますが、臨海斎場の保管料は非常に良心的です。特に組織区内であれば1日3,000円で済むため、混雑時でも費用負担を最小限に抑えながら待機することができます。
その他の実費
その他、必要に応じて以下の費用がかかる場合があります。
- 式場控室（通夜後の宿泊等）：式場使用料に含まれますが、布団代（レンタル）は別途葬儀社経由で必要です。
- 清め塩や骨壺のグレードアップ：基本セットに含まれる場合と、オプションになる場合があります。
これらの細かい費用を積み上げていくと、施設に支払う合計金額が見えてきます。次章では、これに葬儀社の施工費用を合わせた「総額」のシミュレーションを行います。
葬儀費用の総額シミュレーション｜家族葬・一般葬の相場
ここまで解説した「臨海斎場に支払う費用（実費）」と、東京葬儀などの葬儀社に支払う「施工費用（プラン料金）」、そして参列者へのおもてなしにかかる「飲食・返礼品費用」を合算したものが、葬儀の総額となります。ここでは、組織区内住民の方が臨海斎場で葬儀を行う場合のモデルケースを提示します。
ケース1：親族中心の家族葬（参列者15名程度）
近年最も依頼の多い、親しい方のみで行う家族葬のパターンです。
- 臨海斎場への支払い（実費）：約163,000円
- 火葬料：40,000円
- 式場使用料：100,000円
- 待合室：20,000円
- 保管料（1日）：3,000円
- 葬儀社への支払い（施工費）：約400,000円〜600,000円
- 祭壇、棺、遺影、運営スタッフ、ドライアイス、搬送費など。
- ※プラン内容や花祭壇のグレードにより変動します。
- 飲食・返礼品費：約100,000円〜150,000円
- 通夜振る舞い、精進落とし、会葬返礼品。
総額目安：約66万円〜91万円
※お布施（宗教者への謝礼）は別途必要です。
ケース2：一般的な葬儀（参列者50名程度）
ご近所や会社関係の方も呼ぶ一般葬のパターンです。
- 臨海斎場への支払い（実費）：約163,000円
- 施設費用は家族葬と変わりませんが、保管日数が延びればその分加算されます。
- 葬儀社への支払い（施工費）：約600,000円〜900,000円
- 看板の設置や受付設備の増強、スタッフ人数の増員などが必要になります。
- 飲食・返礼品費：約300,000円〜500,000円
- 参列者数に比例して変動する項目です。
総額目安：約106万円〜156万円
予算内で納得のいく葬儀にするために
臨海斎場を利用することで、施設利用料という「固定費」を確実に抑えることができます。浮いた予算を、最後のお別れを彩る「花祭壇」や、参列者への「料理」に充てることで、総額を変えずに葬儀の満足度を上げることが可能です。東京葬儀では、画一的なパックプランではなく、ご予算に合わせた柔軟な見積もり作成を得意としています。
次は、これらの費用の支払い方法やタイミングについて、現実的な側面を解説します。
支払い方法とタイミング：公営斎場ならではの注意点
葬儀費用の支払いには、「いつ」「誰に」「どのような方法で」支払うかというルールがあり、特に臨海斎場のような公営施設では手続きが厳格です。資金計画を立てる上で知っておくべきポイントを整理します。
臨海斎場への支払いは「現金」が基本
多くの公営斎場と同様、臨海斎場の使用料（火葬料、式場使用料、待合室料など）は、原則として現金での当日払い、もしくは事前の手続き時に支払う必要があります。クレジットカードや後日振込には対応していないケースがほとんどです。
通常は、葬儀担当者が代行して手続きを行いますが、現金の準備はご遺族様にて行っていただく必要があります。例えば、前章のシミュレーションで挙げた約16万円〜20万円程度の現金は、通夜・告別式の前日までに手元に用意しておく必要があります。東京葬儀では、こうした現金の準備のタイミングについても、事前の打ち合わせで丁寧にご案内しております。
葬儀社への支払いは選択肢がある
一方で、葬儀社へ支払う「施工費用」や「飲食・返礼品代」については、多くの葬儀社で以下の支払い方法が選べます。
- 銀行振込：葬儀終了後、1週間〜10日以内に振り込むのが一般的です。
- クレジットカード決済：ポイントが貯まるメリットがありますが、限度額に注意が必要です。
- 葬儀ローン：分割払いが可能です。審査に時間がかかる場合があるため、事前の相談が推奨されます。
香典でどこまで賄えるか
「葬儀費用は香典で賄える」という話を聞くことがありますが、近年は家族葬が増加しており、香典の総額は減少傾向にあります。香典収入はあくまで「飲食費や返礼品代の補填」程度と考え、基本となる施設料や施工費は手元の資金で準備する計画を立てるのが安全です。
急な出費に慌てないためにも、事前に概算見積もりを取り、いつまでに幾らの現金が必要かを把握しておくことが大切です。次章では、臨海斎場を利用するメリットを最大限に活かし、さらに費用を最適化するためのポイントをお伝えします。
費用対効果を最大化する：臨海斎場のメリットと節約術
臨海斎場は単に「安い」だけでなく、総合的なコストパフォーマンスが極めて高い施設です。そのメリットを最大限に引き出し、無駄な出費を抑えるためのプロの知恵をご紹介します。
移動費用の「ゼロ化」効果
一般的な葬儀では、「通夜・告別式を行うホール」と「火葬場」が離れていることが多く、その間の移動に以下の費用がかかります。
- 霊柩車：3万〜5万円
- マイクロバス（親族用）：4万〜6万円/1台
- ハイヤー・タクシー：数万円
臨海斎場は火葬場と式場が同じ建物内にあるため、これらの車両費用が一切かかりません。これだけで約10万円前後の節約になります。また、高齢の参列者にとっても、移動の負担がないことは大きなメリットです。
祭壇の工夫でコストコントロール
臨海斎場の式場は、天井が高く広々としていますが、必ずしも巨大な祭壇を飾る必要はありません。最近では、白木祭壇を使わず、生花だけで飾る「花祭壇」が主流です。
東京葬儀では、市場から直接仕入れた新鮮な花を使用し、ボリューム感を出しながらもコストを抑えたデザイン提案が可能です。「寂しくならないようにしたいが、費用は抑えたい」というご相談に対し、空間の使い方や照明効果で華やかさを演出するノウハウを持っています。
日程調整による費用の最適化
臨海斎場は人気があるため、希望の日程が埋まっていることがあります。
「一日でも早く行いたい」と焦って民間の高額な斎場に変更すると、数十万円単位で費用が上がってしまいます。
多少日程が延びても、臨海斎場の空きを待つ方が、保管料（1日3,000円〜8,000円）を払ったとしてもトータルコストは圧倒的に安くなります。焦らずに日程を調整することが、結果として賢い選択となります。
次章では、実際に東京葬儀が臨海斎場で執り行った葬儀の事例をご紹介します。具体的なイメージを持つことで、ご自身のケースに置き換えて検討してみてください。
臨海斎場での葬儀事例：東京葬儀によるサポート内容
ここでは、実際に東京葬儀が担当させていただいた、臨海斎場（組織区内料金適用）でのご葬儀事例をご紹介します。ご遺族様の「費用を抑えつつも、故人らしい温かいお見送りがしたい」というご要望をどのように実現したか、具体的なサポート内容をご覧ください。
事例概要：大田区在住 80代男性の家族葬
- 対象：組織区内住民（大田区）
- 形式：家族葬（通夜・告別式あり）
- 参列人数：20名（親族のみ）
- 利用式場：臨海斎場 1階式場
ご要望と課題
ご遺族様からは「派手な装飾は不要だが、お花が好きだった父のために、棺の周りだけは花いっぱいにしたい」というご希望がありました。また、初めての喪主で手続きに不安があり、当日の流れをしっかりサポートしてほしいとのことでした。
東京葬儀の提案とサポート
1. カスタム花祭壇の作成
セットプランの祭壇ではなく、故人様がお好きだった季節の花を中心にしたオリジナル花祭壇を制作。祭壇の高さを抑える代わりに、棺の周囲を囲むようにお花を配置し、お別れの時にお顔周りが華やかになるよう工夫しました。これにより、標準的なプランよりも費用を抑えつつ、ご要望を満たすことができました。
2. 複雑な動線の誘導サポート
臨海斎場は広く、他の葬儀家の方々ともすれ違う可能性があります。ご高齢の参列者が迷われないよう、控室から式場、火葬棟への移動の際には、専任スタッフが必ず先導し、エレベーターの確保や車椅子の手配をスムーズに行いました。
3. 手続きの完全代行
区役所への死亡届の提出から、臨海斎場の予約、火葬埋葬許可証の取得まで、すべて弊社スタッフが代行。ご遺族様は故人様と過ごす時間に集中していただける環境を整えました。
費用の結果とご感想
総額：約85万円（施設実費・施工費・飲食費含む ※お布施別）
ご遺族様からは「公営斎場ということで事務的な対応を心配していたが、東京葬儀さんのサポートのおかげで、温かく家庭的な雰囲気で見送ることができた。費用も事前の見積もり通りで安心した」とのお言葉をいただきました。
まとめ：臨海斎場の利用で費用を抑えつつ納得のいくお見送りを
臨海斎場は、港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区にお住まいの方にとって、経済的な負担を軽減できる非常に有益な施設です。改めて、そのポイントを振り返ります。
- 組織区内住民の優遇：火葬料40,000円、式場使用料100,000円という破格の料金設定。
- 移動負担の軽減：火葬場併設のため、霊柩車やバス代が不要で、移動の手間もありません。
- 透明性の高い実費：料金体系が明確であり、不要なオプションが発生しにくい構造です。
しかし、素晴らしい施設であっても、葬儀の良し悪しを決めるのは、そこでの時間をどうプロデュースするかという「葬儀社の質」にかかっています。施設料が安いからこそ、その浮いた予算を「故人らしさ」や「ご遺族の安心」のために使うことができます。
東京葬儀は、臨海斎場での施工実績が豊富にあり、施設の特性を熟知しています。「安かろう悪かろう」ではなく、「費用を抑えて、質は高く」を実現するために、私たち専門スタッフが親身になってサポートいたします。
事前の相談や詳細な見積もり作成は無料で承っております。もしもの時に慌てないためにも、まずは一度、東京葬儀までお気軽にご相談ください。ご家族にとって最適なお見送りの形を、一緒に考えていきましょう。